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​若月ドクター疾患名解説

​・・・かもしれないと言われたら、事前に調べてあわてない

若月クリニック 泌尿器科疾患名解説 イメージ画像

「・・・じゃない?」「・・・の疑いがあるかもしれません。」そんな風に何気なく言われたら、とても気になるものですね。いったいそれはどんな病気なの?どんな症状?どんな治療をするの?・・・
若月ドクターがわかりやすく丁寧に解説しましょう。

膀胱、前立腺の炎症

前立腺炎   ◆膀胱炎   

前立腺

◆前立腺炎

前立腺とは 
前立腺は男性の性器のひとつで、膀胱の出口に尿道を取り巻くようにあり、精液の一部を作っています。高齢になると前立腺癌や前立腺肥大症が多くなりますが、若い人では前立腺炎が多くなります。

◆症状 
前立腺炎には急性と慢性があります。 
急性前立腺炎では発熱と風邪のような全身の症状、排尿痛、頻尿、残尿感、下腹部不快感などで、風邪と間違われることもよくあります。  
慢性前立腺炎では痛みや不快感が股間部、睾丸、陰茎、下腹部、鼠径部、殿部から大腿部などに感じられます。頻尿や残尿感、尿切れが悪く、排尿後に下着が汚れる。尿が漏れてないが、漏れているような感じがする。このほかにも、射精時の痛み、射精後の痛み、などいろいろな症状があります。 

◆診断 
急性前立腺炎では、直腸診で前立腺が大きくなり、疼痛、熱感があり、尿検査で白血球や細菌が証明されます。慢性では前立腺に痛みがあり、前立腺をマッサージして前立腺液を尿道に押し出して、前立腺液の混ざった尿を調べると白血球や細菌が証明されることがあります。白血球や細菌が証明できず、前立腺の痛みだけで診断をする場合もあります。この他に、前立腺超音波検査、尿流量測定、残尿測定や、50歳以上ではPSA(前立腺の腫瘍マーカー)を検査することがあります。

◆原因と分類 
原因は大腸菌などが多いのですが、淋菌やクラミジアによる尿道炎が波及して起こることもあります。慢性前立腺炎は細菌性と非細菌性に分けられ、さらに炎症所見のない前立腺症と言う場合もあります 。  

1 細菌性急性前立腺炎 
大腸菌などが原因でおこると風邪を引いたような症状があって、発熱があり、頻尿や排尿痛などが起こります。尿道から細菌が入って起こりますが、大腸菌などの腸内細菌は性感染症の原因菌ではありません。
性感染のクラミジアなどの尿道炎が原因の場合は、特に自覚症状はなく精液に膿や血液が混じるだけの場合もありますが、排尿時の痛みや不快感のあることもあります。

2 細菌性慢性前立腺炎 
a 急性前立腺炎から慢性に移行した場合。
b 急性の症状がなく、前立腺マッサージの後の尿検査で、白血球や細菌が証明されて診断される場合。

3 非細菌性慢性前立腺炎 
a 抗生物質が有効で、細菌が原因と考えられるが、一般細菌が検出されない。(淋菌、クラミジアやマイコプラズマなどの性感染症で菌が検出できない)
b 結核菌が原因で、通常の細菌検査ではわからないが、特殊な培養検査では検出できる。
c 白血球は確認できて炎症があるが、細菌性ではなく抗生物質が無効。

4 前立腺症
a 循環障害 
b 神経圧迫(陰部神経など)
c 筋痛症(骨盤底筋群など)など
慢性前立腺炎と同じような症状であるが、炎症ではない。

5 類似疾患
a 神経因性膀胱
b 神経性頻尿
c 間質性膀胱炎
d 膀胱頸部硬化症
e 尿道狭窄
f 精索静脈瘤  など

◆治療
急性前立腺炎では、感受性のある抗菌剤で前立腺に移行のよいものを使用します。
ニューキノロン、ミノマイマイシン、ペニシリン、ファロム、オラセフやケフレックスなど。
2-3週間の治療が必要です。
慢性前立腺炎でも同様の抗菌剤が有効ですが、以前有効とされていたバクタは現在では適応症がなく使用できません。 
抗菌剤が無効の場合には、セルニルトンやいろいろな漢方薬、鎮痛剤を使用します。 
類似疾患の場合には、排尿状態の改善などの治療が必要なこともあります。
慢性前立腺炎や、前立腺症では診断や治療に時間がかかりますが、最終的には治癒や軽快状態となると考えています。 

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◆膀 胱 炎

急性膀胱炎と慢性膀胱炎があります。急性膀胱炎になるのはほとんどが女性です。頻尿、排尿痛、残尿感、血尿などを伴います。5日間程度の投薬で治ります。細菌培養検査と感受性検査が重要です。 

◆原因 
急性膀胱炎では腸内細菌(自分の)のことが多く、大腸菌や腸球菌などです。尿検査と尿細菌培養検査を行い、5日間程度の投薬治療を行います。大腸菌でも耐性菌がありますので、感受性試験と検尿による治癒の確認が重要です。 
慢性膀胱炎にはいろいろな原因があり、神経因性膀胱(男女)や前立腺肥大症(男性)など尿が出にくくなる病気がある場合、膀胱腫瘍や膀胱結石(男女)がある場合、間質性膀胱炎(尿がたまると痛みがあり、排尿で軽快するが頻尿が強い)あるいは結核性の膀胱炎などがあります。頻尿や排尿痛など膀胱炎の症状が長期間続く場合には原因を精査して治療する必要があります。 

◆女性で急性膀胱炎の多い理由 
女性では尿道が男性に比べて短く、肛門に近いために、細菌が尿道から膀胱へ入って膀胱炎を起こしやすくなっています。
尿道が短いために、排尿の最後に尿道内の尿が膀胱内に吸い上げられるように逆流して尿道口周囲にある自己の腸内細菌が侵入して炎症を起こすといわれています。
排尿をあまり我慢したり、洗浄シャワーで尿道周囲を洗浄しすぎたりすると細菌が入りやすいと考えられます。 
更年期の女性ホルモンが低下して尿道や膀胱の粘膜の抵抗力が低下することが原因のこともあります。

◆診断  
尿検査で白血球が増加していることを確認し、尿細菌培養で細菌の種類と、感受性(どの薬が効果があるか調べる)検査をします。急性の場合はこれで十分です。  
治りにくい場合や、繰り返す場合には、次の検査が必要なこともあります。 
▼尿流量検査(排尿の勢いを調べる検査):膀胱の機能に異常がないかを調べる。
▼超音波検査:膀胱内に結石や腫瘍がないかを調べる。腎臓や尿管の異常を調べる。 
▼細胞診検査:尿に腫瘍細胞が出ていないかを調べる。 
▼尿結核菌検査:少なくなりましたが、結核性の膀胱炎もあります。

◆治療 
女性の急性膀胱炎はたいていが、大腸菌などの腸内細菌(便の中などに常在する菌)によるものです。セフェム系の(バナン、フロモックスなど)薬が通常有効で、万が一妊娠していても禁忌ではありません。ニューキノロン(クラビットなど)系の薬もたいてい有効ですが、クラビット耐性の大腸菌も時々あり、妊娠していると禁忌となっています。  
慢性膀胱炎の場合には原因に応じた治療が必要になります。 

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膀胱炎
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