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院長コラム

泌尿器科専門医、性感染症学会認定医の若月院長からのお知らせや、アドヴァイスなど随時掲載いたします。

 風邪薬と排尿障害

風邪薬と排尿障害

風邪薬を飲むと、尿が出にくくなることがあります。前立腺肥大症などがあるとまったく尿が出なくなってしまうこともあります。これは風邪薬のある成分が、膀胱や尿道の働きを抑えてしまうためです。

1 一般感冒薬の主成分
 抗ヒスタミン作用、自律神経作用、抗炎症作用が主なものです。薬剤の種類がメーカーごとに多少異なりますが、作用としては大差ありません。

これらの成分の働きは
a  抗ヒスタミン作用とはアレルギー反応を抑える成分で鼻や喉の腫れを改善します。
b  自律神経作用は、鼻やのどなどの自律神経に働いて鼻水や咳を止めます。
c  抗炎症作用のある成分は、痛みを抑えます。

もう少し詳しく見ると 

a  抗ヒスタミン剤としては、マレイン酸クロルフェニラミンが主なものです。
b  自律神経の内、副交感神経を押さえる成分としてはベラドンナアルカロイドや沃化イソプロパミドなどが主なものです。自律神経の内、交感神経を刺激する成分としては、塩酸フェニルプロパノールアミンやエフェドリン作用のある漢方薬で麻黄湯があります。
c  抗炎症作用のある成分としては、サリチル酸アミド、トラネキサム酸、塩化リゾチームなどがあります。

2 膀胱尿道機能と自律神経
 膀胱や尿道は自律神経で働きます。自律神経というのは意識的には動かせない神経です。眠っていても尿は漏れないのはこのためで、意識しなくても呼吸ができるのと同じことです。

簡単にいうと、副交感神経が働いて、交感神経がおさえられると尿がでますが、この反対では排尿が出にくくなります。

もう少し詳しく見ると
 膀胱を収縮させる自律神経は骨盤神経という副交感神経です。
この骨盤神経が抑制されると、排尿筋の収縮が低下します。つまり尿が出にくくなります。
 交感神経はおもに尿道括約筋を収縮させ、一部は膀胱の収縮を抑制します。膀胱の交感神経は下腹神経、尿道の交感神経は陰部神経です。下腹神経が刺激されると膀胱収縮が抑制され、陰部神経が刺激されると尿道の括約筋が収縮して尿が出にくくなります。
 このため、副交感神経を抑制したり、交感神経を刺激すると排尿機能が障害される(尿が出にくくなる)ことがあります。

さらに詳しく、膀胱尿道の働きをみますと
 排尿を我慢したり、尿が出にくいときに出そうとすることがあると思います。これは、陰部神経の一部分は随意神経という、意識的に動かすことの出来る成分を含んでいるからで、漏れそうになっても意識的に我慢できるのはこの神経と筋肉が働いているからです。尿が出にくくておなかに力をいれるとある程度は勢いがよくなります。これは腹圧で膀胱を圧迫している状態です。ただ尿道にも腹圧がかかりますので、括約筋の緊張がとれていないと排尿できません。

これを感冒薬の成分で考えますと
 ベラドンナアルカロイドやヨウ化イソプロパミドなどの成分は副交感神経の抑制作用があります。鼻汁分泌を抑制して感冒症状を和らげますが、膀胱収縮が抑えられて、排尿は抑制されます。つまり尿が出にくくなります。
 前立腺肥大症などの排尿障害のある方の場合には、これらの成分の含まれない感冒薬のほうが安全で、葛根湯や麻黄湯などが比較的安全に使用できます。(葛根湯や麻黄附子細辛湯は錠剤やカプセル製剤があります)。

 塩酸フェニルプロパノールアミンはエフェドリン作用(麻黄湯の麻黄はエフェドリン作用があります)があります。気管支拡張作用や鎮咳作用があり、感冒症状を和らげますが、尿道括約筋が収縮したり、膀胱収縮筋が抑制されます。
 つまりこれでも尿が出にくくなりますが、肥大症で尿道括約筋に作用するアルファブロッカーを使用していると、排尿障害は軽くなると考えられます。
 また排尿とは関係ありませんが、血管収縮もおこるため、血圧が上昇することがあるようです。脳出血などの副作用を起こすことがあり、注意が必要で、使用量を守る必要があります。

 マレイン酸クロルフェニラミンは抗ヒスタミン作用があり、たいていの感冒薬に含まれています。発赤や腫張をとり、感冒による炎症を和らげます。


 このような感冒薬は、症状を和らげるだけのもので、ウイルスを退治するものではありませんが、咽頭や鼻腔の粘膜の炎症を取ることで、粘膜のバリアー機能を保ってウイルスや細菌に対する自己防衛機能を高めますので、二次感染を防ぐとともに、自然治癒が早まるのではないかと考えられます。

ドクター若月疾患名解説

気になる症状があれば

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